大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)1738号 判決

按ずるに町長は町を代表する権限を有するから服部が今町町長として控訴人に対し金借の申込をしたことは町の代表者としての行為でありその効果はもとより今町に帰することは明である。しかし今町には収入役が置かれ前記金員貸借の当時近藤重蔵がその収入役であつたことは原審証人近藤重蔵の証言で明である。しからば今町の出納その他の会計事務は収入役近藤重蔵の職務権限に属し(地方自治法第一七〇条)町長は町のため金員を受領する権限は有しないとしなければならぬ。前認定の如く控訴人が二回に亘り貸付けた金員は町長服部に交付されたもので控訴組合の担当者田村は服部が収入役の委任を受けたものと解して交付したのであつたが、近藤が町長に対しそのような金員受領を委託した証拠は全くなく寧ろ町長服部は何等近藤に連絡することもなく近藤の署名捺印をも偽造した上で金員の交付を受けたことは先に認定したところである。されば控訴人が今町に貸付けたと云う九十万円二口の金員の交付は今町のために受領する権限のある者に交付されなかつたと断ずるの外ない。およそ消費貸借は金員の交付をその成立の要件とするものであるから控訴人主張の一口の貸付については今町との間に消費貸借は成立しなかつたと云はねばならない。

(角村 菊池 土肥原)

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